RCD管理人の平成 継男です。
ランエボ、インプレッサ、RX-7と続き、平成スポーツカー四天王のトリを飾るのは、やはりこの車しかありません。 「トヨタ スープラ (JZA80)」
かつては「直線番長」「重たいGTカー」などと揶揄されたこともありましたが、今やその評価は完全に覆り、「世界で最も愛される日本車」の一つとして神格化されています。その中心にあるのは、伝説の名機「2JZ」エンジン。
しかし、この車を手に入れるということは、単なる中古車購入ではありません。それは「資産管理」であり、同時に「盗難リスクとの戦い」でもあります。 今回は、私たち現役サラリーマン世代が、この「平成の怪物」とどう向き合うべきか、徹底的に掘り下げます。
- 中古車市場におけるグレードごとの価格相場と、もはや「資産」となりつつある現状について
- 世界屈指の耐久性とパワーを誇る伝説のエンジン「2JZ-GTE」のメカニズムと魅力について
- 『ワイルド・スピード』によるブームや、復刻部品供給といった人気を支える背景について
- 3.0Lエンジンの高額な維持費や、「盗難リスク」への対策について
はじめに:なぜスープラは「伝説」になったのか

平成5年(1993年)に登場した「JZA80型スープラ」は、当時のトヨタが持てる技術と予算を惜しみなく投入して作り上げた、フラッグシップ・スポーツカーです。
キャッチコピーは「THE SPORTS OF TOYOTA」。
流麗でマッシブなボディ、ドライバーを包み込むようなコックピット、そして圧倒的な耐久性を誇る直列6気筒エンジン。バブルの残り香漂う豪華な作りは、コストカットが叫ばれる現代の車では絶対に再現不可能です。
映画『ワイルド・スピード』の影響で世界的な人気が爆発し、今や新車価格の数倍〜10倍以上で取引されることも珍しくありません。それでも私たちがこの車に憧れるのは、そこに「内燃機関の到達点」があるからです。
1. 狂乱の中古車市場:スープラはもはや「不動産」に近い

まず、現実を直視しましょう。JZA80スープラの中古車相場は、他の平成スポーツカーと比較しても「異常」なレベルに達しています。
グレード別・現在の中古車価格帯
JZA80は大きく分けて、自然吸気(NA)の「SZ」系と、ツインターボの「RZ/GZ」系に分かれます。さらに、トランスミッション(AT/MT)によって価格が劇的に変わります。
| グレード | エンジン / ミッション | 中古車価格帯(目安) | 傾向 |
| SZ / SZ-R (NA) | 2JZ-GE / 4AT | 350万円~600万円 | 最も安価なエントリーモデルだが、それでも高騰中。「見た目重視」なら狙い目。 |
| SZ-R (NA) | 2JZ-GE / 6MT | 500万円~800万円 | NAでも6速マニュアル搭載モデルは希少で人気が高い。 |
| RZ / RZ-S (ターボ) | 2JZ-GTE / 4AT | 600万円~900万円 | ターボパワーを味わいたいが、MTにこだわらない層に人気。 |
| RZ (ターボ) | 2JZ-GTE / 6MT | 1000万円~2000万円超 | 聖域。状態の良い個体や、最終型(平成14年式付近)は家が買える値段。 |
【RCD管理人としての考察】
正直に申し上げます。サラリーマンの給料だけで、これから「ターボの6速MT(RZ)」を買うのは、住宅ローン並みの覚悟が必要です。しかし、「買った値段よりも高く売れる可能性がある」という点では、最強のリセールバリューを持つ車でもあります。購入というよりは「投資」に近い感覚が必要かもしれません。
2. 神のエンジン「2JZ-GTE」と、堅牢なメカニズム

スープラがここまで神格化された理由は、デザイン以上にその中身、特にエンジンにあります。
2.1 2JZ-GTE:オーバークオリティの塊
3.0L 直列6気筒ツインターボエンジン「2JZ-GTE」は、「鋳鉄製ブロック」を採用しており、その強度は異常なほど高いです。
- 耐久性: 純正の内部パーツ(ピストンやコンロッド)のままでも、ブーストアップで500ps~600psに耐えられると言われています。
- チューニング: 内部を強化すれば1000psオーバーも狙える、世界屈指のチューニングベースです。
- フィーリング: 直列6気筒ならではの完全バランスによる振動の少なさと、どこまでも滑らかに回る重厚な加速感は、高級サルーンと戦闘機を足して2で割ったような独特の世界観があります。
2.2 ゲトラグ製6速MTと足回り
上位グレード(RZ、SZ-Rの一部)に搭載されたのは、ドイツのゲトラグ社製6速マニュアルトランスミッションです。剛性感が高く、大パワーを受け止める強靭なギアボックスですが、独特の「ガラガラ音(歯打ち音)」がするのも特徴です(これは故障ではなく仕様です)。
足回りは4輪ダブルウィッシュボーンを採用。発売当初は「ニュルブルクリンクで鍛えた」ものの、挙動がピーキーと言われることもありましたが、後期型になるにつれて熟成され、サスペンションシステム「REAS(リアス)」の導入などで、しなやかさと安定性を増していきました。
3. なぜ今、スープラなのか?人気の変遷と3つの理由

発売当時はGT-R(R32/R33)の影に隠れがちだったスープラが、なぜ今これほどまでに評価されているのでしょうか。
理由1. 映画『ワイルド・スピード』とポール・ウォーカー
決定的なのは、2001年公開の映画『ワイルド・スピード(The Fast and the Furious)』です。主人公ブライアン(ポール・ウォーカー)が駆るオレンジ色のスープラが、フェラーリを信号グランプリでちぎるシーンは、世界中の車好きに衝撃を与えました。
これにより、「Supra is Legend」というイメージが北米を中心に確立され、日本国内の中古車が大量に海外へ流出することになりました。
理由2. 「直6ターボ」という絶滅危惧種
環境規制が厳しくなる中、大排気量の直列6気筒ターボエンジンは絶滅しました(BMWなどが継承していますが、かつての2JZのような荒々しさとは異なります)。
「ガソリンを爆発させて走る喜び」を最も濃密に感じさせてくれるエンジンとして、2JZは今後も永遠に語り継がれる存在です。
理由3. トヨタによる「ヘリテージパーツ」の供給
ここが他メーカーと大きく違う点です。トヨタは「GRヘリテージパーツプロジェクト」として、JZA80スープラの廃盤部品の一部を復刻し、再販売しています。
ヘッドランプ、ドアハンドル、ブレーキブースターなど、維持に不可欠なパーツが新品で手に入る(かもしれない)という安心感は、旧車を維持する上で絶大なアドバンテージです。
4. サラリーマンオーナーに突きつけられる「維持」と「防衛」の現実

憧れだけでスープラを買うと、痛い目を見ます。特にスープラならではの深刻な問題があります。
4.1 維持費:重量級の税金と燃費
ランエボやインプレッサ(2.0L)と違い、スープラは3.0Lエンジンです。
- 自動車税: 3.0Lクラス+13年超の重課税で、年間約58,600円かかります。
- 重量税: 車両重量が重いため、車検ごとの重量税も高めです(約37,800円/2年~)。
- 燃費: 街乗りで4~6km/L。3.0Lツインターボが飲み込むハイオクガソリンの量は半端ではありません。満タン(70L)にすると1万円が軽く飛びます。
- タイヤ代: 太いタイヤ(リア255サイズなど)を履くため、交換費用も高額です(4本で10万円~20万円コース)。
【年間維持費の目安】
ローン・保険を除いても、年間50万円~70万円は覚悟が必要です。
4.2 最大のリスク:盗難対策
スープラオーナーにとって、故障以上に怖いのが「車両盗難」です。
海外での需要が極めて高いため、プロの窃盗団に常に狙われています。
- 青空駐車は厳禁: 自宅の青空駐車場に停めておくのは、「どうぞ持っていってください」と言っているようなものです。シャッター付きガレージが理想ですが、難しい場合は物理ロック(ハンドルロック、タイヤロック)とセキュリティシステム、GPS発信機など、二重三重の対策が必須です。
- 車両保険: 高騰した時価額で車両保険に入れるかどうかが重要ですが、加入を断られるケースや、保険料が極めて高額になるケースが増えています。
4.3 内装の劣化
スープラ特有の悩みとして、ダッシュボード周りのパネル塗装の劣化があります。独特のラバー塗装が経年劣化でベタベタになったり、剥げたりします。これをリペアするのにも費用がかかります。
5. スープラオーナーの「生の声」:誇りと不安の狭間で
オーナーからの声

「予算の関係でNAのATを買いました。『遅い』とか言われますが、街乗りなら十分速いし、何よりこのコックピットに座って戦闘機のようなメーターを見るだけで幸せです。NAはターボほど熱を持たないので、故障が少ないのもサラリーマンには助かります。」

「10年前に300万円で買ったRZ(MT)に乗っています。今売れば1000万円と言われますが、売る気はありません。高速道路でのクルージングの安定感と、踏み込んだ時の『クォォォン』という2JZサウンドは、何物にも代えがたい。ただ、コンビニに寄るだけでも盗まれないかヒヤヒヤして、目が離せません。」

「スープラを買うために、まずセキュリティ完備の月極ガレージを借りました。家から徒歩10分かかりますが、安心代です。維持費に加えガレージ代で月3万円…。妻には『あんたの愛人への手当てね』と嫌味を言われています(笑)。」
6. まとめ:「怪物」を飼う覚悟はあるか

JZA80スープラは、日本の自動車史における一つの頂点です。
3.0Lツインターボ、FR、そして280ps(実測はそれ以上)。バブルの時代がもたらした「余裕」と「過剰性能」は、効率化を優先する現代社会では二度と生まれません。
しかし、その所有は決して楽ではありません。
高額な税金、劣悪な燃費、そして常に盗難の恐怖と隣り合わせの日々。
それでも、アクセルを踏み込んだ瞬間に背中を蹴飛ばされるような加速と、2JZエンジンの咆哮を聞けば、すべての苦労が報われます。
「いつかはスープラ」。
もしあなたがその夢を叶える資金と、守り抜く環境を用意できるなら、今すぐ動くべきです。なぜなら、「今日が一番安い日」かもしれないからです。
【記事の終わりに:平成スポーツカー特集・完結】
これまで、ランエボ、インプレッサ、RX-7、そしてスープラと、平成を代表するスポーツカーを紹介してきました。
次回からは、少し視点を変えて、「サラリーマンでも現実的に維持できる!?平成の隠れた名車(アコードユーロR、アルテッツァなど)」にスポットを当てていきたいと思います。お楽しみに!


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