スバル アルシオーネ SVX:ジウジアーロが描いた「夢」。水平対向6気筒と変形ウィンドウを持つ、規格外のGTクーペ

SUBARU

RCD管理人の平成 継男です。

レガシィの現実的なツインターボの世界から一転、今回は一気にロマンと個性の極地へ向かいます。

スバルがバブルの絶頂期に放った、「規格外」のフラッグシップクーペ。それが、「スバル アルシオーネ SVX」です。

SVXは、インプレッサやレガシィとはまったく異なる、「究極のパーソナルGTカー」を目指して開発されました。イタリアの巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロによる流麗なデザインと、水平対向6気筒エンジン、そして最大の特徴である「変形サイドウィンドウ」は、今なお色褪せない強い個性を放っています。

しかし、その個性の裏には、日本の環境には合わなかったいくつかの「悲劇」と、現代のオーナーを悩ませる「維持の壁」があります。

この記事のポイント
  • ジウジアーロデザインとEJ33水平対向6気筒エンジンの唯一無二のロマンについて
  • 全車4ATのミッション故障リスクと、短命モデルゆえの部品欠品という維持の壁について
  • 高性能ながら価格が高騰していない中古車相場と、購入後の覚悟の重要性について
  • 変形サイドウィンドウなど、他の日本車にない個性的な機構について

はじめに:スバルがバブルに懸けた「最高傑作」

アルシオーネ SVXは、1991年に登場しました。当時のスバル(富士重工業)は、インプレッサでモータースポーツに熱中する一方、フラッグシップとして「世界に通用するパーソナルクーペ」を開発するという壮大な目標を掲げていました。

その結果生まれたのが、SVXです。

デザインは、イタリアの巨匠ジョルジェット・ジウジアーロが担当。航空機をモチーフにした流麗なキャノピー(天蓋)のようなデザインと、窓の一部だけが開閉する「変形サイドウィンドウ」は、当時の日本車としては前代未聞でした。

しかし、その個性が強すぎたこと、そしてバブル崩壊後の不況により、SVXは商業的には成功せず、短命に終わります。その結果、「不遇の傑作」「時代の徒花」として、今なお語り継がれています。

1. 夢の残骸?現在のSVX中古車相場

SVXは、販売台数が少ないため、中古車市場での流通も多くありません。しかし、その特殊性から、他のスポーツカーのような異常な高騰は起こっていません。これは、私たちマニアにとって、非常に現実的なチャンスと言えます。

グレード別・現在の中古車価格帯(CXD / CXW型)

SVXは、基本的にグレードによるエンジンの差はなく、全車水平対向6気筒 EJ33型を搭載しています。主な違いは、初期型と後期型、そして装備の違いです。

グレードエンジントランスミッション中古車価格帯(目安)傾向
全グレードEJ33 (3.3L 水平対向6気筒 NA)4AT80万円~180万円走行距離や整備状況に大きく左右される。MT車は存在しない。
後期型(L-LTD)EJ334AT120万円~250万円以上生産台数が少なく、コンディションが良いものは高値。

【RCD管理人としての考察】

SVXの魅力は、そのデザインとエンジンに尽きます。全車4ATのため、MTにこだわる方には向きませんが、ATでも 3.3Lの水平対向6気筒エンジンの滑らかさは十分に味わえます。重要なのは、価格よりも「エンジンの状態とミッションの滑りがないか」を最優先することです。

2. 規格外のロマン:ジウジアーロデザインとEJ33エンジン

SVXが「傑作」と呼ばれるゆえんは、そのデザインとエンジンにあります。

2.1 航空機のようなデザインと「変形ウィンドウ」

SVXのデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロは、この車に徹底的に「空力」と「開放感」を追求しました。

  • キャノピーデザイン:ルーフからリアハッチにかけてガラスで覆われたキャノピーデザインは、まるで戦闘機に乗っているような開放感と未来感を与えます。
  • 変形サイドウィンドウ:空気抵抗を減らすため、ドアガラス全体ではなく、中央の小さな部分だけが開閉する特殊な構造を採用。この構造こそが、SVXをSVXたらしめる最大の個性です。

2.2 スバルのフラッグシップエンジン:EJ33

SVXに搭載されたEJ33型エンジンは、3.3Lの水平対向6気筒NAです。

  • 出力: 240ps。当時のスバル車では最もパワフルなエンジンでした。
  • フィーリング: EJ20のドロドロとしたフィーリングとは異なり、直列6気筒にも劣らない極めて滑らかで静粛性の高い回転フィールが特徴です。これは、グランドツーリングカーとしての資質を追求した結果です。
  • AWD: もちろん、スバル独自のシンメトリカルAWDを採用。大排気量、ハイパワーを路面に確実に伝え、高い安定性を誇ります。

3. SVXオーナーに突きつけられる「維持」の現実

SVXは、その特殊な構造と短命モデルゆえに、オーナーに対して非常に厳しい維持の試練を与えます。

3.1 4ATの持病:ミッション故障のリスク

SVXの最大の泣き所は、全車に搭載された4ATトランスミッションの耐久性です。

  • 問題点: 3.3LのEJ33型エンジンが発生する大トルクに対し、当時の4ATの容量が不足しており、ミッション滑りや故障が非常に多発しました。
  • 対策:中古車を選ぶ際は、ミッションオイル(ATF)の交換頻度と、変速時の滑りやショックがないかを徹底的に確認する必要があります。最悪の場合、ミッションの載せ替えやオーバーホールが必要です。

3.2 部品供給の厳しさ:特殊構造ゆえの困難

短期間で生産が終了したフラッグシップモデルであるため、部品供給は非常にシビアです。

  • 専用部品の欠品:特に変形サイドウィンドウのモーターやレール、ゴムパッキンなどは、すでに廃盤となっている部品が多く、故障すると修理不能になる可能性があります。
  • 外装部品: バンパーやライト類も同様に希少です。ぶつけたり、破損したりすると、部品を見つけるのは至難の業です。

3.3 水平対向6気筒の整備性

EJ33エンジンは整備性が悪いです。特にプラグ交換やタイミングベルト交換は、V6や直列エンジンに比べて工賃が高くつきます。

【年間維持費の目安】

3.3Lエンジンは自動車税が高額(13年超で年間58,600円)。これに加えて、ミッション修理や大排気量NA特有の燃費の悪さ(街乗り6~8km/L程度)を考慮すると、年間60万円以上の維持費(修理積立含む)は覚悟が必要です。

4. SVXオーナーの「生の声」:コメント欄の反響

オーナーからの声

38歳・製造業
38歳・製造業

「中古で購入後、すぐにミッションが滑り、オーバーホールしました。費用は40万円以上。しかし、修理後のSVXは本当に素晴らしい。この車は、『ミッションの修理代を払って初めてスタートラインに立てる車』だと悟りました。」

52歳・自営業
52歳・自営業

「初期型に乗っています。とにかくデザインが素晴らしい。今見ても古さを感じません。高速道路での安定性は抜群で、EJ33エンジンの滑らかなフィーリングは、まさにグランドツーリングカーです。ただし、変形ウィンドウの開閉モーターが故障し、部品を探すのに半年かかりました。覚悟が必要です。」

38歳・製造業
38歳・製造業

「MTがないのが残念ですが、ATでもEJ33のサウンドは痺れます。インプレッサとは違う、大人のゆったりとした速さです。妻もデザインを褒めてくれるので、家族会議は一発通過でした(笑)。」

5. まとめ:SVXは「デザインへの愛」を問われる車

スバル アルシオーネ SVXは、当時のスバルの技術力と、デザインの巨匠ジウジアーロの夢が結実した、日本車史に残る個性派GTクーペです。

「水平対向6気筒」「AWD」「変形ウィンドウ」といった要素は、この車を唯一無二の存在にしています。

しかし、その個性が強すぎた結果、ATの持病、部品の欠品、高額な維持費という、非常に厳しい現実をオーナーに突きつけます。

SVXを所有することは、「故障の不安と付き合いながら、この美しいデザインを後世に残す」という使命感にも似た、深い愛が必要です。

「見た目に惚れた。他はどうでもいい」。その強い気持ちがある方だけが、この「規格外の傑作」のオーナーとなる資格があると言えるでしょう。

【次の記事予告】

FTO、レガシィ、SVXと続きましたので、次回は同じくバブル期が生んだFFクーペで、マツダの技術とロマンが詰まった「マツダ MX-6」にスポットを当てたいと思います。ご期待ください!

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