RCD管理人の平成 継男です。
FTOのようなマニアックなクーペの次は、ぐっと現実に引き戻される「優等生」をご紹介します。しかし、この優等生は、羊の皮を被った「獰猛な狼」です。
「家族は守る。だが、速さも譲れない。」
現役世代のスポーツカー愛好家にとって、この究極の矛盾を解消する唯一の答えが、今回ご紹介する「スバル レガシィ B4/ツーリングワゴン(BE5/BH5型)」です。
ターボ、AWD、そして280ps。これだけのスペックを、日常使いできるセダンやワゴンに詰め込んだレガシィは、平成の日本が生んだ最高の「ファミリースポーツ」と言えるでしょう。
しかし、その心臓部である「シーケンシャル・ツインターボ」は、同時にオーナーに大きな試練を与える「諸刃の剣」でもあります。レガシィのロマンと、ツインターボ維持の現実について徹底的に語ります。
- 家族公認で280psのAWDスポーツを楽しめるレガシィの魅力と中古車相場についてわかる
- シーケンシャル・ツインターボが起こすターボの谷、その官能的な高回転フィール
- ツ維持費が高額になる具体的な故障リスクについて
- 実用性と速さを両立させた平成の傑作を、今手に入れるべき理由についてわかる
はじめに:平成が生んだ「究極の妥協点」

平成10年(1998年)に登場した3代目レガシィ(BE5型セダン/B4、BH5型ツーリングワゴン)は、スバルが当時持てる技術をすべて注ぎ込んだモデルです。
当時、スポーツカーの馬力自主規制の上限である280psを、セダンやワゴンといった実用性の高いボディで実現。
さらに、スバル独自の「シンメトリカルAWD(四輪駆動)」と「水平対向エンジン」を組み合わせることで、圧倒的な高速安定性と安全性を手に入れました。
レガシィは、「妻に内緒で高性能な車を買いたい夫の夢」を具現化した車であり、そのツーリングワゴンは、バブル後の日本のライフスタイルを象徴する存在となりました。
1. まだ手が届く?現在の中古車市場と価格帯

レガシィは、GT-RやインプレッサWRXほど極端な価格高騰はしていません。しかし、良質なMT車や最終型Sエディションは、確実に値上がり傾向にあります。
グレード別・現在の中古車価格帯(BE5 / BH5型)
| グレード | エンジン | トランスミッション | 中古車価格帯(目安) | 傾向 |
| GT-B / B4 RSK | EJ20ツインターボ | 4AT | 50万円~120万円 | 流通量が多く、価格は手頃。走行距離は多い傾向。 |
| GT(ワゴン) | EJ20ツインターボ | 5MT | 80万円~180万円 | 本命。タマ数が少ない。高性能と実用性を両立した人気モデル。 |
| Sエディション / 限定車 | EJ20ツインターボ | 5MT | 150万円~250万円以上 | STIパーツ採用モデルなど。希少性が高く、価格は高値安定。 |
【RCD管理人としての考察】
狙うべきは、やはりターボモデルのMT車です。4AT車も悪くありませんが、ツインターボのパワーを最大限に引き出し、ツインターボの欠点である「ターボの谷」を乗りこなす楽しさはMTにしかありません。
ファミリーカーとしては最高の性能比で、維持費を考慮しても「現実的な最速」の選択肢です。
2. ツインターボの「光」:280psとシンメトリカルAWD

レガシィが日本の道路で最強クラスの地位を築いたのは、その独自技術にあります。
2.1 心臓部:EJ20型 シーケンシャル・ツインターボ
レガシィGT系に搭載されたEJ20型エンジンは、当時の自主規制上限である280psを達成。その特徴は、「シーケンシャル・ツインターボ」という複雑なシステムです。
- プライマリー(主)ターボ: 低回転域から作動し、日常のトルクとスムーズさを確保します。
- セカンダリー(従)ターボ: 4000rpm前後から合流し、一気に最大出力を発生させます。
- フィーリング: 4000rpm付近でプライマリーからセカンダリーへ切り替わる瞬間、一瞬の「ターボの谷」を越えると、まるでもう一段階の加速が始まるような、強烈な体験が待っています。
2.2 スバルの魂:シンメトリカルAWD
スバル独自のシンメトリカルAWD(左右対称四輪駆動)は、レガシィの運動性能の核です。
- 抜群の安定性: 水平対向エンジンとミッション、駆動系が車体の中心線上にシンメトリー(左右対称)に配置されており、雪道や高速走行での安定性は世界トップクラスです。
- コーナーリング: AWDによる高いトラクション性能で、豪雨や雪の日でも安心してアクセルを踏み込めます。
2.3 水平対向エンジンのロマン
レガシィの「ドロドロ」という独特の排気音は、水平対向エンジンと、当時の不等長エキゾーストマニホールドが生み出すものです(BE/BH型は等長化が進みましたが、それでも他の直列エンジンにはない独特のサウンドが残っています)。この排気音こそが、スバルオーナーにとっての最大のロマンの一つです。
3. ツインターボの「影」:維持の最大の試練

レガシィを安価に手に入れられる反面、ツインターボシステムはオーナーに多大な試練を与えます。
3.1 ターボの谷と真空ホースの「地獄」
ツインターボの切り替わりを制御しているのは、複雑な真空(バキューム)ホースとソレノイドバルブのシステムです。
- 経年劣化: ホースやバルブ類が経年劣化すると、セカンダリーターボが作動しなくなる(ターボの谷が深くなる)というトラブルが頻発します。
- 整備性の悪さ: EJ20のV型エンジンは、エンジンルームが非常に狭く、ツインターボ周りの整備は専門知識と工賃が必要です。原因究明だけで数万円かかることも珍しくありません。
3.2 消耗品としてのヘッドガスケット
EJ20型エンジンは、初期モデルに比べ改善されたとはいえ、水平対向エンジン特有の「ヘッドガスケット抜け」のリスクが常に伴います。
- 症状: エンジンオイルと冷却水が混ざる、オーバーヒートの原因になるなど。
- 費用: 修理にはエンジン脱着が必要なため、20万円~40万円程度の費用がかかる場合があります。予防策として、中古車購入時に交換歴を確認することが非常に重要です。
3.3 燃費とランニングコスト
車重が重く、280psを絞り出すツインターボエンジンは、当然ながら燃費は劣悪です。
- 燃費: 街乗りで6~8km/L程度。スポーツ走行をすれば4km/L台も覚悟が必要です。
- タイヤ: AWDは4輪とも同じ銘柄・サイズを同時に交換する必要があり、交換費用も高額です。
【年間維持費の目安】
ローン、保険を除いても、年間40万円~60万円程度(ガソリン、オイル、予防整備積立)は見ておくべきでしょう。「いつか来るツインターボの修理代」の積み立てが必須です。
4. レガシィのロマン:家族と趣味の両立

理由1. 妻公認の「最速ワゴン」
ワゴンボディ(BH5)は、圧倒的な積載量を誇り、キャンプ用品やゴルフバッグ、ベビーカーも余裕で飲み込みます。これにより、「速い車が欲しい」という夫の願望と「使いやすい車が欲しい」という妻の要求を、奇跡的に両立させました。
理由2. 熟成された「グランドツーリング」性能
WRXが「硬さ」を追求したのに対し、レガシィは長距離走行を重視した「しなやかさ」があります。280psのパワーとAWDの安定性で、長時間運転しても疲れにくい、最高のグランドツーリングカーとしての評価も非常に高いです。
理由3. カスタムの楽しみ
スバルはカスタムパーツが非常に豊富です。特にSTIの純正パーツや、チューニングメーカーからのパーツが多く出回っており、ツインターボをシングルターボ化する「シングル化」カスタムも定番です。自分好みに育てる楽しみも残されています。
5. レガシィオーナーの「生の声」:コメント欄の反響
オーナーからの声

「BH5ワゴンに10年乗っています。子供が小さい時はベビーカーを載せ、今は塾の送迎に使っています。高速道路の合流や雪道で、280psとAWDの安心感がどれだけ重要か痛感します。ただ、最近ツインターボの切り替わりが不安定で、修理の予約をしました…恐怖です。」

「B4 RSKのMTに乗っています。ツインターボの複雑さに嫌気がさして、思い切ってシングルターボ化しました。費用はかかりましたが、ターボの谷がなくなり、低回転からスムーズに加速するようになり、別の車になりました。整備に自信があるならおすすめです。」

「地味に見えて、実は最速。このギャップがたまりません。今の車にはない、機械的な複雑さと、それによるロマンがあります。維持は大変ですが、この車を手放したら、もう二度と家族公認で速い車に乗れない気がして、手放せません。」
6. まとめ:レガシィは「ロマン」と「現実」を懸けた車
スバル レガシィ B4/ツーリングワゴン(BE5/BH5型)は、「ハイパワースポーツカーが欲しい」という男の夢と「家族のための実用性」を、平成という時代に奇跡的に融合させた車です。
しかし、そのロマンの象徴であるシーケンシャル・ツインターボシステムは、「いつ壊れるか分からない」という大きな不安を常にオーナーに与えます。
レガシィを所有するということは、「家族の笑顔」と「修理費用」という、二つの大きな責任を負うことになります。それでも、雪道を安心して走り抜け、長距離移動を快適にこなしながら、いざという時に280psの加速で路面を蹴り出す喜びは、他のどの車でも味わえません。
「ハイリスク・ハイリターン」なこの車に、あなたは賭けてみますか?
【次の記事予告】
プリメーラ、FTOと来て、次は個性的なデザインとAWDを持つ「スバル アルシオーネ SVX」の記事を作成する予定です。SVXは、デザインと機構のどちらも規格外の、まさに「隠れた名車」です。ご期待ください!



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