三菱 ミラージュ Cyborg-R:打倒シビックを誓った三菱の刺客。175馬力のMIVECエンジンが奏でる、反骨のホットハッチ

MITSUBISHI

RCD管理人の平成 継男です。

トヨタ スターレット GTターボの「軽量FFターボ」の刺激を振り返りましたが、今回は同じ「FFホットハッチ」でありながら、全く異なるアプローチで「打倒ホンダ・シビック」を掲げた、三菱の意欲作をご紹介します。

その名は、「三菱 ミラージュ Cyborg-R(サイボーグR)」です。

90年代の1600ccクラス(テンロククラス)は、ホンダのVTECエンジンを搭載したシビックが圧倒的な強さを誇っていました。

しかし、三菱自動車は黙ってはいませんでした。ホンダのVTECに対抗すべく、独自の可変バルブタイミングリフト機構「MIVEC(マイベック)」を開発。

それを搭載し、当時のクラス最強馬力を引っ提げて登場したのが、このミラージュ Cyborg-Rです。

「シビックと同じじゃつまらない」。そんな反骨精神を持つ走り屋たちに愛されたこの車ですが、現在では三菱車特有の「電装系の弱さ」や「部品供給の壁」が、オーナーに立ちはだかります。

この記事のポイント
  • 三菱独自の可変バルブシステム「MIVEC」エンジンの荒々しい魅力について
  • 三菱車ならではの高いボディ剛性と、競技シーンでの実力について
  • ISCVやECUの液漏れなど、三菱車に特有の電装系の弱点と、予防整備の重要性について
  • マイナーな本格スポーツカーを所有する、「反骨精神」に満ちたロマンと維持の現実について

はじめに:テンロクウォーズの「黒い刺客」

三菱 ミラージュ Cyborg-R(CA4A型)は、1991年にフルモデルチェンジした4代目ミラージュのトップグレードとして登場しました。

後に1995年には5代目(CJ4A型)へと進化しますが、今回は特に衝撃を与えたCA4A型(3代目ハッチバック)を中心に語ります。

当時の1600ccクラスは、グループAレースなどのカテゴリーで最も熱い戦いが繰り広げられていました。その絶対王者は、170馬力を誇るホンダ シビック SiR(EG6型)。

これに対し、三菱は新開発エンジン「4G92型 MIVEC」を投入。その最高出力は、シビックを上回る175馬力。

「三菱が本気を出した」「ホンダを超えた」

カタログスペック上では王者を超えたこの車は、その丸みを帯びた有機的なデザインとは裏腹に、非常に攻撃的な性格を持つ「羊の皮を被った狼」でした。

スターレットが「ストリートの暴れん坊」なら、ミラージュは「サーキットのテクニシャン」を目指した、三菱のプライドの結晶です。


1. 絶滅危惧種:現在の中古車相場と希少性

ミラージュ Cyborg-R、および後継のCyborg-ZRは、シビック タイプR(EK9)などに比べると知名度で劣るものの、その実力を知るマニアによって取引されており、現在はタマ数が激減しています。

モデル別・現在の中古車価格帯

ミラージュのスポーツグレードは、世代によってキャラクターが異なります。

型式年代エンジン最高出力中古車価格帯(目安)傾向
CA4A型1991-19954G92 MIVEC175ps100万円~200万円丸いボディ。流通量は極めて少ない。
CJ4A型1995-20004G92 MIVEC175ps120万円~250万円シャープなデザイン。ジムカーナ車両として使い倒された個体が多い。

【RCD管理人としての考察】

シビック(EG6/EK9)が300万円~500万円以上で取引されている現状を考えると、ミラージュは「比較的安価に手に入る本格テンロクスポーツ」と言えます。

しかし、安いのには理由があります。それは「部品供給の絶望的な少なさ」です。車両価格だけで飛びつくと、維持の段階で苦労することになります。

特に、競技車両(ジムカーナやダートトライアル)として酷使された個体が多く、ボディの歪みや修復歴には細心の注意が必要です。


2. Cyborg-Rのロマン:MIVECという回答

ミラージュ Cyborg-Rの魅力は、ホンダのVTECとは異なる味付けがなされたエンジンと、三菱らしい剛性感のある走りにあります。

2.1 4G92型 MIVECエンジンの咆哮

MIVEC(Mitsubishi Innovative Valve timing Electronic Control system)は、三菱が開発した可変バルブタイミング・リフト機構です。

  • スペックの勝利:当時最強だったシビックSiR(170ps)を意識し、それを上回る175psを達成。リッターあたり100馬力を超えるNAエンジンを市販化した三菱の技術力は、世界を驚かせました。
  • フィーリング:VTECが「カコーン!」と乾いた音で切り替わるのに対し、MIVECは「グォォォン!」と太く力強い吸気音とともに、5000回転付近から強烈に吹け上がります。その荒々しさは、洗練されたホンダエンジンとは違う、「男臭いメカニカルな魅力」にあふれていました。
  • 高回転の伸び:レブリミットの8200回転まで一気に回る爽快感は、テンロクNAならではの特権です。

2.2 シャシー性能と「三菱の剛性」

三菱車は伝統的にボディ剛性が高いと言われていますが、ミラージュも例外ではありません。

  • 足回り:フロントはストラット、リアはマルチリンクを採用。特にリアの接地感が高く、コーナーでの粘り強さはシビック以上とも評されました。
  • 競技での強さ:ジムカーナやダートトライアルなどの競技では、低速トルクの太さとボディ剛性の高さから、シビックと互角、あるいはそれ以上の成績を残すことも多く、「競技ベースならミラージュ」という玄人も多かったのです。

2.3 「サイボーグ」というネーミング

「Cyborg(サイボーグ)」というグレード名は、80年代のSFブームを感じさせる響きですが、この車には不思議とマッチしていました。

人間(ドライバー)と機械(車)が一体化して速さを生み出す、そんなイメージを想起させる、平成初期ならではのカッコいいネーミングです。


3. ミラージュオーナーに突きつけられる「三菱の洗礼」と「維持の現実」

ミラージュ Cyborg-Rは、エンジンなどの主要機関は頑丈ですが、補機類や電装系に三菱車特有の弱点を抱えています。

3.1 悪名高き「ISCV」の故障

三菱車のオーナーを最も悩ませるのが、ISCV(アイドル・スピード・コントロール・バルブ)の故障です。

  • 症状:アイドリングが不安定になり、信号待ちでエンストしたり、ハンチング(回転数が上がったり下がったり)を繰り返します。
  • 原因と対策:カーボン(煤)の堆積や、ステッピングモーターの故障が原因です。清掃で直ることもありますが、交換部品は高価で、かつ廃盤のリスクと常に隣り合わせです。

3.2 ECUのコンデンサー液漏れ

90年代の三菱車(ランエボなども含む)の持病として、ECU(エンジンコントロールユニット)内部のコンデンサーからの液漏れがあります。

  • 被害:液漏れした電解液が基板を腐食させ、最悪の場合エンジンがかからなくなります。
  • 予防:まだ症状が出ていなくても、ECUを開けてコンデンサーを対策品に交換する「予防修理」が必須です。これを放置して基板が死ぬと、中古ECUを探す旅に出ることになります。

3.3 MIVEC特有のタペット音

走行距離が伸びると、エンジンヘッドから「カチャカチャ」というタペット音が大きくなる傾向があります。

  • メンテナンス:タペットクリアランスの調整が必要ですが、MIVEC機構は複雑なため、調整には手間と工賃がかかります。
  • オイル管理:MIVECは油圧で作動するため、オイル管理が悪いと切り替わりがスムーズにいかなくなります。高品質なオイルをこまめに交換することが、好調を維持する秘訣です。

3.4 絶望的な外装部品の供給

ホンダ シビックは世界中にファンがいるため、社外パーツや復刻パーツがありますが、ミラージュの状況は深刻です。

  • 外装部品:バンパー、ライト、モール類はほぼ全滅です。事故を起こしたら、修理不能になる可能性が高いです。
  • 内装部品:パワーウィンドウのスイッチやレギュレーターも弱く、壊れると窓が開かない(または閉まらない)事態になります。

【年間維持費の目安】

1600ccクラスなので税金は標準的ですが、電装系のトラブルや廃盤部品の捜索費用、予防整備を考慮すると、年間30万円~45万円程度は見ておくべきでしょう。特に「ECU修理代」は確保しておく必要があります。


4. ミラージュオーナーの「生の声」:コメント欄の反響

オーナーからの声

40歳・製造業
40歳・製造業

「峠でシビックEG6の後ろについた時、MIVECの高回転の伸びで追い回すのが快感でした。ホンダのような乾いた音ではなく、腹に響くような野太い音が気に入っています。ただ、アイドリング不調には何度も泣かされました。」

52歳・自営業
52歳・自営業

「安かったので買いましたが、維持は大変です。パワーウィンドウが壊れて、解体屋を回って部品を探しました。『マイナー車に乗る』というのは、こういう苦労も含めて愛することなんだと学びました。」

40歳・製造業
40歳・製造業

「CJ4A(後期型)に乗っています。シビックよりボディがしっかりしていて、無理が効くのが良いところです。競技で使っているので外装はボロボロですが、エンジンだけは20万キロ超えても元気です。三菱のエンジン屋としての意地を感じます。」

5. まとめ:ミラージュCyborg-Rは「反骨精神」を試される車

三菱 ミラージュ Cyborg-Rは、絶対王者シビックVTECに対し、三菱が技術の粋を集めて挑んだ、気骨あるチャレンジャーです。

MIVECエンジンの175馬力というスペックは、単なる数字以上の「意地」を感じさせます。

しかし、その所有は、「マイナー車ゆえの部品不足」と「電装系の弱さ」という、孤独な戦いを強いられます。シビックのようにパーツは選り取り見取りではありません。

ミラージュを選ぶということは、「流行りに流されず、自分の信じたメカニズムを愛する」という強い意志表示でもあります。

「ホンダ党に一泡吹かせたい」「人と同じ車は乗りたくない」。そんな熱い反骨精神(パンクスピリット)を持つ私たち現役世代にとって、ミラージュ Cyborg-Rは、今こそ再評価すべき名車と言えるでしょう。

【次の記事予告】

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