ホンダ アコード ユーロR:羊の皮を被ったVTECマシン。「家族」と「走り」を両立するサラリーマン最後の希望

HONDA

RCD管理人の平成 継男です。

前回まで「平成のスポーツカー四天王(ランエボ、インプレッサ、RX-7、スープラ)」という、維持費も購入費も「ド級」のモンスターたちを紹介してきました。

正直、書いていて私自身も「普通のサラリーマンには、もう手が届かない世界に行ってしまったのか…」と、少し寂しい気持ちになりました。

しかし、諦めるのはまだ早いです。 平成のホンダが、私たちお父さん世代のために残してくれた「最後の聖域」があります。

家族を乗せて買い物に行ける快適な4ドアセダンでありながら、ひとたびアクセルを踏めば、フェラーリも真っ青の超高回転VTECサウンドを奏でる車。 今回は、「ホンダ アコード ユーロR(CL1 / CL7)」をご紹介します。

この記事のポイント
  • アコードユーロRが「現実的に狙える最後の高性能セダン」である理由について
  • 初代CL1(H22A)と2代目CL7(K20A)それぞれの高回転VTECエンジンの魅力
  • 4ドアセダンという実用性を持ちながら、家族会議の承認を得るための具体的なメリット
  • CL1/CL7特有のウィークポイント(故障しやすい箇所)について

はじめに:「Type R」ではなく「Euro R」である理由

ホンダには「Type R」という絶対的なブランドがあります。サーキットで勝つために快適性を犠牲にした、レーシングカーのような存在です。

しかし、私たち現役世代には、守るべき生活があり、乗せるべき家族がいます。「エアコンレス」「遮音材なし」の車を日常で使うのは、家族の理解を得るのが難しいでしょう。

そこで輝くのが「Euro R(ユーロR)」です。

欧州のアウトバーンやワインディングを快適かつ高速で駆け抜けることを目的に開発されたこのグレードは、「大人のためのType R」とも言える存在。

高騰しすぎたスポーツカー市場において、現実的な価格で「本物のVTEC」を味わえる、数少ない選択肢です。

1. まだ間に合う?現在の中古車市場と相場観

スープラやGT-Rが1000万円を超える中、アコードユーロRはまだ「頑張れば手の届く範囲」に留まっています。しかし、近年の「MTセダン需要」の高まりにより、じわじわと価格が上昇しています。

代表的な2つのモデル(CL1型とCL7型)

モデル型式年式エンジン中古車価格帯(目安)傾向
初代 ユーロRCL1平成12~14年H22A (2.2L)80万円~200万円タマ数が激減しており、状態の良いものは希少。価格差が激しい。
2代目 ユーロRCL7平成14~20年K20A (2.0L)120万円~300万円人気の本命。デザインも現代的で、流通量も比較的多い。

【RCD管理人としての考察】

「CL1」は維持の難易度が上がってきていますが、「CL7」はまだ現実的な選択肢です。特にCL7は、インテグラType R(DC5)やシビックType R(EP3)と同じ「K20A」エンジンを積んでいながら、これら2車種に比べて割安で放置されています。「狙い目」とはまさにこのことです。

2. エンジン屋ホンダの魂:2つの名機「H22A」と「K20A」

ユーロRの真価は、何と言ってもエンジンにあります。ターボ全盛の今だからこそ、NA(自然吸気)の高回転VTECは宝石のような輝きを放ちます。

2.1 初代CL1:荒々しいトルクの「H22A」

初代に搭載された「H22A」型2.2L 直列4気筒VTECエンジンは、220ps / 22.5kgmを発生。

「プレリュード」譲りのこのエンジンは、排気量が大きいため低速トルクがあり、街乗りが楽です。

そしてVTECが切り替わった瞬間の「クォーン!」という乾いたサウンドと、身体を蹴り出されるような加速感は、「昭和・平成初期のホンダ」を感じさせる荒々しさがあります。

2.2 2代目CL7:究極の回転フィール「K20A」

2代目CL7に搭載されたのは、ホンダ4気筒エンジンの最高傑作と言われる「K20A」型2.0L i-VTECエンジン。220ps / 21.0kgm。

カタログ数値は初代と同じですが、中身は別物です。

  • 8400rpmまで回る快感:レブリミットは驚異の8400rpm。針が跳ね上がるように回り、高回転域での突き抜けるようなパワー感は、「世界最高の4気筒」と称賛されます。
  • 6速MTの採用:CL1は5速MTでしたが、CL7は6速MTを採用。クロスしたギア比により、パワーバンドを外さずに加速し続けることができます。

2.3 シャシー性能:FFセダンの最高峰

「アコード=おじさんの車」というイメージで乗ると、腰を抜かします。

ダブルウィッシュボーンサスペンション(CL1/CL7前期まで)による路面追従性は抜群。ボディ剛性も高く、ステアリングを切ればスッと鼻が入る、「FF(前輪駆動)とは思えないハンドリング」を実現しています。

3. なぜ今、ユーロRがサラリーマンに刺さるのか?人気の3つの理由

理由1. 「家族会議」を突破できる4ドアセダン

これが最大の理由です。

妻に「2ドアのスポーツカーが欲しい」と言えば即却下されますが、「アコード(セダン)が欲しい」と言えば、「ああ、アコードね(普通の車ね)」と承認される確率が格段に上がります。

リアシートは広く、トランクにはゴルフバッグもベビーカーも載ります。「羊の皮を被った狼」ならぬ、「マイホームパパの皮を被った走り屋」になれるのです。

理由2. 維持費が「常識の範囲内」であること

2.0LクラスのNAエンジンなので、自動車税も燃費も、先述のスープラやRX-7に比べれば天国です。

燃費は街乗りで8~10km/L、高速なら13km/L以上伸びることもあります。サラリーマンのお小遣いで維持できる、ギリギリのラインを守ってくれています。

理由3. マニュアル(MT)を操る最後のチャンス

新車市場からMT車が消えゆく中、「高回転NAエンジン + 6速MT + セダン」というパッケージは、もはや絶滅危惧種です。

「左手と左足を使って車と対話する」というプリミティブな喜びを、日常の通勤や買い物で味わえる希少な車です。

4. ホンダ車とはいえ油断大敵:維持の現実とウィークポイント

「ホンダ車だから壊れないだろう」というのは、半分正解で半分間違いです。製造から20年前後が経過しており、固有のトラブルも出てきています。

4.1 初代CL1の維持:部品供給との戦い

CL1は、正直に言って部品供給が厳しくなっています。

  • ギア鳴り: 2速・3速のシンクロが弱く、ガリッと音がする個体が多いです。
  • オイル消費: H22Aエンジンは、年式的にオイル上がり・下がりを起こしている個体が多く、こまめなオイルレベルのチェックが必要です。
  • パワステ・デスビ: パワステポンプからのオイル漏れや、ディストリビューターの故障は「ホンダ車の持病」です。

4.2 2代目CL7の維持:比較的安心だが…

CL7はまだ部品が出ますが、以下の点は要チェックです。

  • クラッチマスターシリンダー: 異音が出たり、ペダルの戻りが悪くなったりします。定番の故障箇所です。
  • ドアアクチュエーター: ドアロックが反応しなくなる故障が頻発します(地味に不便です)。
  • ヘッドライトの黄ばみ: デザイン上、ヘッドライトが上を向いているため紫外線を受けやすく、すぐに黄ばみます。磨きとコーティングが欠かせません。

4.3 共通の悩み:純正部品の廃盤

「無限」のパーツや、純正のエアロパーツ、内装部品などは廃盤が増えています。「壊れたら社外品で直す」あるいは「中古部品を探す」という柔軟な対応が求められます。

【年間維持費の目安】

自動車税、車検積立、ガソリン代、オイル交換等を含め、年間35万円~45万円程度。

スープラ等の半額近くで済みますが、それでも軽自動車やコンパクトカーよりは高くなります。

5. アコードユーロRオーナーの「生の声」:コメント欄の反響

オーナーからの声

40歳・製造業
40歳・製造業

「CL7に乗って5年。嫁には『普通のセダン』と言って買いましたが、納車初日にエンジンを回してしまい、音でバレました(笑)。でも、後席が広いので子供の送迎にも文句は言われません。8000回転まで回した時の『快感』は、仕事のストレスを全部消し飛ばしてくれます。」

52歳・自営業
52歳・自営業

「CL1のH22Aのドッカン加速が忘れられません。今のCL7は洗練されすぎていて…と言いたいところですが、ボディ剛性はCL7が圧倒的ですね。CL1は部品がなくて泣く泣く手放しました。これから買うなら絶対にCL7をおすすめします。」

40歳・製造業
40歳・製造業

「インテグラType Rと迷いましたが、長距離移動もするのでアコードにしました。結果、大正解。レカロシートが純正で付いているのもポイント高いです。高速道路での安定感が抜群で、リッター13km走る経済性も素晴らしい。最高の相棒です。」

6. まとめ:サラリーマンが「夢」を見られる最後の現実解

ホンダ アコード ユーロRは、決して派手な車ではありません。

ランエボのような暴力的な加速も、RX-7のような芸術的な美しさもありません。

しかし、「日常の中に、確かな非日常がある」。

毎朝の通勤、休日の家族サービス。そんなありふれた時間の中で、シフトノブを握り、アクセルを少し踏み込むだけで、エンジニアたちの情熱(VTEC)を感じることができる。

維持費、実用性、そして走りの楽しさ。

このトライアングルをこれほど高次元でバランスさせた車は、平成という時代だからこそ生まれた奇跡です。

価格が高騰しきる前に、この「大人の良識あるスポーツセダン」を手に入れてみてはいかがでしょうか。

【次の記事予告】

次回は、同じく「現実的に維持できる平成の名車」シリーズ第2弾!

トヨタが放ったFRセダンの異端児、「アルテッツァ(SXE10)」について語ります。「AE86の再来」と呼ばれた期待と現実、そして今だからこそわかる「素材の良さ」について深掘りします。お楽しみに!

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