三菱 FTO:FFのフェラーリか、未完の傑作か。バブル末期が生んだ流麗な「MIVECスポーツ」の光と影

MITSUBISHI

RCD管理人の平成 継男です。

高性能FRセダンのアルテッツァ、高性能FFセダンのアコードユーロRとプリメーラと来て、いよいよ「マニアックな平成の隠れた名車」シリーズの本題へと突入します。

今回は、三菱がバブルの終焉期に放った、流麗なデザインを持つFFスポーツクーペ、「三菱 FTO」について語ります。

FTOは、ランサーエボリューションのような暴力的な速さとは対極にある、「FF(前輪駆動)のフェラーリ」という異名を持ちました。

のデザインと、当時世界初の技術であるMIVECエンジンは、今なお多くのファンを魅了します。しかし、この車を維持するには、特有の「覚悟」が必要です。

この記事のポイント
  • MIVEC搭載の高性能グレード「GPX」が手に入る希少なチャンスについて
  • V6 MIVEC(可変バルブ機構)エンジンが奏でる官能的なサウンドについてわかる
  • 、FTOを維持するために必要な「愛と覚悟」の現実について
  • 「FFのフェラーリ」と称された流麗なデザインと、V6 FFクーペという独自のロマンについて

はじめに:三菱の情熱が詰まった「小さなスポーツカー」

三菱 FTO(エフティーオー:F-T-O)は、1994年に登場しました。当時の三菱は、ランサーエボリューションでWRCを席巻し、GTOでフラッグシップを固めるなど、モータースポーツに熱い情熱を注いでいました。

FTOは、その中で「誰でも気軽に、官能的な走りを楽しめるクーペ」という役割を担いました。全幅1735mmというワイドボディながら、全高は低く抑えられ、当時の日本車としては異例の流麗でグラマラスなデザインを持っています。

その心臓部には、当時世界初の技術を投入したMIVEC(マイベック)エンジンを搭載。このエンジンが奏でる高回転域のサウンドとフィーリングは、FTOを単なるFFスポーツクーペで終わらせませんでした。

しかし、短命に終わり、タマ数も少ないFTOは、今や「隠れた名車」として、マニアの間で密かに取引されています。

1. 悲運の短命モデル:現在のFTO中古車相場

FTOは、バブル崩壊後の市場の冷え込みと、クーペ人気の低迷により、わずか4年で生産を終了しました(販売は1994年~2000年)。そのため、中古車市場のタマ数は極めて少なく、程度の良い車両を見つけるのは至難の業です。

グレード別・現在の中古車価格帯(DE3A型 / DE2A型)

FTOは、主に高性能な2.0L V6の「GP/GPX」と、1.8L 直4の「GR」に分かれます。

グレードエンジントランスミッション中古車価格帯(目安)傾向
GR6A12 (1.8L V6 NA)4AT/5MT50万円~100万円V6サウンドが楽しめるエントリーモデル。
GP/GPX6A12 MIVEC (2.0L V6 NA)5MT/4AT/INVECS-II100万円~250万円本命。MIVEC搭載の高性能モデル。MT車や後期型は特に高値。
限定車(GP Version R)6A12 MIVEC5MT200万円~350万円以上軽量化された特別仕様車。極めて希少。

【RCD管理人としての考察】

FTOのロマンを味わうなら、MIVEC搭載の「GPX」か「GP Version R」一択です。

特にMT車は希少性が高く、価格は上昇傾向にあります。市場に出回っている車両の多くは、20年以上の経年劣化があるため、「価格よりも整備履歴」を重視して探す必要があります。

2. FTOの心臓部:「世界初」が詰まった高性能エンジン

FTOが「FFのフェラーリ」と称された最大の理由は、そのエンジンにあります。当時のFF車としては異例のV型6気筒エンジンを搭載し、さらに高性能グレードには革新的な技術が投入されました。

2.1 6A12 MIVEC:官能のV6サウンド

高性能グレードに搭載された「6A12 MIVEC」型2.0L V6エンジンは、当時世界初となる可変バルブタイミング・リフト機構である「MIVEC」を、量産V6エンジンとして初めて採用しました。

  • 出力: 200ps(マニュアル車)。リッター100psを達成した高性能NAエンジンです。
  • サウンド: V6エンジンならではの、粒の揃った滑らかで官能的なサウンドが魅力。特にMIVECが作動する高回転域では、FFスポーツとは思えない、フェラーリを彷彿とさせるような甲高い音を響かせます。
  • フィーリング: VTECと同様に、カムが切り替わった瞬間に一気にトルクが立ち上がる特性があり、非常に刺激的です。

2.2 INVES-IIスポーツモードA/T

FTOのもう一つの特徴が、三菱が当時開発した「INVECS-IIスポーツモードA/T」です。

これは、学習機能付きのオートマチックトランスミッションで、ドライバーの運転傾向を学習し、最適なシフトパターンを選択します。

  • AT車の楽しさ:MT車が主流だった時代に、AT車でもスポーティな走りを楽しめるように開発されました。特に後期型ではマニュアルモード(シーケンシャルシフト)が追加され、ATでも高い人気を誇りました。

3. FTOが愛される理由:デザインとロマン

短命に終わったFTOが、なぜ今も根強いファンに支持されているのでしょうか。

理由1. バブルの残り香が漂う流麗なデザイン

当時の三菱がデザインにかけた情熱は凄まじいものがありました。抑揚のあるフェンダーライン、くびれたボディサイド、そして特に後期型に採用された大型のリアスポイラー戦闘機のようなリアビューは、今見ても非常に魅力的です。他のどの日本車にも似ていない、個性の塊です。

理由2. 希少性と独自性(V6 FFクーペ)

2.0LのV型6気筒エンジンをFFに搭載し、なおかつ高性能NAスポーツクーペに仕上げるというコンセプトは、世界的にも非常に珍しいです。ライバルのインテグラやシビックが直4だったのに対し、FTOはV6という差別化を図り、「V6 FFクーペはFTOしかない」という独自性が、コアなファンを惹きつけています。

理由3. 漫画『頭文字D』での活躍

アルテッツァやRX-7と同じく、漫画『頭文字D』に登場したことも、若い世代への認知度を高めました。MIVECエンジンを搭載したFTOの「高回転FF」としての独自の戦い方が、ファンに強い印象を残しました。

4. FTOオーナーに突きつけられる「維持」の試練

FTOを維持することは、ランエボやスープラとは違う、別の意味での難しさがあります。それは、「部品の希少性」「構造の複雑さ」に起因します。

4.1 部品供給の厳しさ:短命モデルの宿命

FTOは短期間で生産が終了したため、部品の再生産(復刻)の対象になる可能性が低く、廃盤部品が非常に多いです

  • 外装部品: バンパー、ライト、モール類などの外装部品は壊すと手に入りません。中古部品を探すか、FRPなどで自作するしかありません。
  • 内装部品: スイッチ類や内装パネルも廃盤が多く、内装のヤレを直すのが非常に困難です。

4.2 MIVECエンジンの整備難易度

MIVECエンジン自体は非常に高性能ですが、V型6気筒をFFの狭いエンジンルームに押し込んでいるため、整備性が非常に悪いです。

  • タイミングベルト交換: V6エンジンかつタイベル式のため、交換作業は非常に手間がかかり、工賃が高額になります(15万円~25万円程度)。
  • MIVECの切り替わりトラブル: 油圧でカムを切り替えるMIVEC機構は、オイル管理が悪いと作動不良を起こします。専用のオイルコントロールバルブ(OCV)も壊れやすいと言われています。

4.3 AT車の故障リスク

FTOのAT車(INVECS-II)は、変速ショックや故障が多いという報告が多く、特に初期型では注意が必要です。中古車を選ぶ際は、変速がスムーズに行われるかを重点的にチェックする必要があります。ロマンを追求するなら、故障リスクが少ないMT車を選ぶのが賢明です。

【年間維持費の目安】

2.0Lクラスなので自動車税はまだ許容範囲ですが、修理費の積立が必須です。

ローン・保険を除き、年間40万円~55万円程度(修理積立金含む)は見ておく必要があります。

5. FTOオーナーの「生の声」:コメント欄の反響

オーナーからの声

38歳・製造業
38歳・製造業

「GPXのMTに乗っています。あの高回転サウンドは、他のFF車では絶対味わえません。デザインが独特なので、駐車場でよく声をかけられます。ただ、最近ヘッドライトが片方切れて、新品がどこにも売っていません。修理はまさに部品との戦いです。」

52歳・自営業
52歳・自営業

「ランエボに乗っていましたが、速すぎるのと維持費に疲れてFTOに乗り換えました。FTOは速すぎず、遅すぎず、日本の道にちょうどいい。それでいて官能的なサウンドがある。まさに大人のスポーツクーペです。ただし、整備してくれる工場が少ないのが悩みです。」

28歳・製造業
28歳・製造業

「漫画で見て憧れて買いましたが、パーツがなさすぎてビビっています。特に外装はぶつけたら終わり。運転は楽しいですが、毎日がヒヤヒヤです。でも、誰も乗っていない車に乗る優越感はたまりません。」

6. まとめ:FTOは「愛」と「覚悟」を試される車

三菱 FTOは、バブル時代の三菱の技術と情熱が詰まった、非常に個性的なFFスポーツクーペです。

「FFのフェラーリ」と称されたその官能的なV6 MIVECサウンドと、流麗なデザインは、今なお色褪せません。

しかし、短命モデルゆえの部品の希少性と、V6エンジン特有の整備性の悪さは、オーナーに大きな試練を与えます。FTOは、お金や速さだけでなく、「その車に対する深い愛」と「手間をかける覚悟」が試される車と言えるでしょう。

「誰も知らない名車」に乗り、愛と情熱を注ぎたい、私たち平成の車好きにとって、FTOは最後のロマンを味わうのに最適な一台かもしれません。

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