RCD管理人の平成 継男です。
アルシオーネ SVXのような規格外のフラッグシップクーペを見たところで、次に参るのは、同じくバブル期のマツダが、「5チャンネル体制」という壮大な野心のもとに生み出した FFスポーツクーペです。
今回は、知る人ぞ知るFFスペシャリティクーペ、「マツダ MX-6」について深掘りします。
MX-6は、北米市場を意識した流麗なデザインと、当時のマツダが誇る「V6エンジン」と「4WS(四輪操舵)」という先進技術を搭載していました。しかし、その登場はバブル崩壊と重なり、日本では短命に終わりました。
なぜこの車は埋もれてしまったのか。そして、今このFFクーペを維持するということは、何を意味するのか。そのロマンと現実を徹底的に語ります。
- V6エンジンが生み出すサウンドと、先進的な4WSによるFFスポーツとしての魅力について
- 整備性の悪いV6エンジン構造や、4WS機構の故障リスクといった維持の厳しさについて
- 流麗なデザインを持つ、バブル崩壊で埋もれた隠れた名車の現在の中古車相場について
- 部品欠品の不安と付き合いながら、この個性的なクーペを愛するロマンについて
はじめに:5チャンネル体制が生んだ個性派クーペ

マツダ MX-6(2代目 GE系)は、1991年から1995年頃にかけて販売されました。当時のマツダは、販売網を5つのチャンネル(マツダ、アンフィニ、ユーノス、オートザム、オートラマ)に拡大する「5チャンネル体制」という、壮大な販売戦略を展開していました。
MX-6は、そのうちの「マツダ店」、そして海外の市場に向けて投入されたモデルであり、兄弟車には「クロノス」(セダン)や、ユーノス店から販売された「ユーノス 500」(美しいコンパクトセダン)などがありました。
そのターゲットは、北米のパーソナルクーペ市場。低く構えたスタンスと、流れるような「ラウンドキャビンデザイン」は、当時の日本車としては非常に個性的であり、「和製フォード・プローブ」としても知られています(フォード・プローブと車台を共用していました)。
しかし、販売戦略の失敗とバブル崩壊の波をモロに受け、MX-6は日本ではわずか4年ほどで姿を消すことになります。
1. 悲運の名車:現在の中古車相場とMTの希少性

MX-6は生産台数が少ないため、中古車市場のタマ数は極めて少ないです。しかし、その不人気と短命ゆえに、RX-7やロードスターのような高騰はしていません。
グレード別・現在の中古車価格帯(GE系)
MX-6は、基本的に2.0L直4モデルと2.5L V6モデルに分かれます。
| グレード | エンジン | トランスミッション | 中古車価格帯(目安) | 傾向 |
| G(2.0L) | KF-ZE (2.0L直4 NA) | 4AT/5MT | 40万円~80万円 | エントリーモデル。タマ数は最も少ない。 |
| GE/GS(2.5L) | KL-ZE (2.5L V6 NA) | 4AT/5MT | 70万円~150万円 | 本命。V6エンジンと、オプションで4WSが選択可能。 |
| 後期型 4WS | KL-ZE | 5MT | 100万円~200万円以上 | 状態が良いMT車、特に4WS搭載車は希少価値が高い。 |
【RCD管理人としての考察】
MX-6のロマンを味わうなら、やはり名機「KL-ZE型 2.5L V6」を搭載したモデルが最良です。
このエンジンの「官能的なサウンド」は、MX-6を選ぶ最大の理由になります。4WSを搭載したMT車は極めて希少で、もし見つけたら即決する価値があるでしょう。
2. マツダの先進技術:V6エンジンと4WSの融合

MX-6は、FFクーペでありながら、当時のマツダの先進技術がふんだんに盛り込まれていました。
2.1 マツダの名機:KL-ZE型 V6エンジン
高性能グレードに搭載されたKL-ZE型2.5L V6エンジンは、当時マツダが誇った名機の一つです。
- 出力: 200psを発生。
- フィーリング: 特筆すべきはその「サウンド」です。当時のV6 NAエンジンとしては高回転まで気持ちよく吹け上がり、FF車でありながら、多気筒V6ならではの滑らかで澄んだ官能的なサウンド**を奏でます。これは、FTOのV6 MIVECと並ぶ、平成NAスポーツのロマンです。
2.2 異次元のハンドリング:4WS(四輪操舵)
MX-6の最大の特徴の一つは、オプション設定された4WS(四輪操舵)です。
- 低速域: 前輪と後輪を逆位相に動かし、最小回転半径を小さくします。これにより、MX-6は見た目以上に小回りが利きます。
- 高速域: 前輪と後輪を同位相に動かし、高速での車線変更やコーナーリングの安定性を高めます。
- 評価: FF車特有の鼻先の重さや、高速域での安定性の問題を、4WSが見事に解消。当時の評論家からは、「FFでありながら、FRのような自然な挙動」と高く評価されました。
3. MX-6オーナーに突きつけられる「維持」の現実

MX-6は、比較的安価に手に入りますが、その後の維持には特有の難しさがあります。
3.1 整備性の悪さと部品欠品
FFの横置きエンジンにV6を搭載しているため、エンジンルームは非常にタイトです。
- プラグ交換: V6のリアバンク(バルクヘッド側)のプラグ交換は、インテークマニホールドを外す必要があり、工賃が高額になります。
- 部品の廃盤: 5チャンネル体制崩壊後の短命モデルであるため、純正部品の廃盤が進んでいます。特に外装部品(バンパー、ライト)や、V6専用のエンジン制御部品の欠品は深刻です。
3.2 4WSシステムの維持費
4WS搭載車は、その複雑な機構ゆえに維持費が高くなります。
- 油圧系統のトラブル: 4WSのシステムは油圧で作動しており、オイル漏れやポンプの故障が起こりやすいです。
- 電動モーターの故障: 電動モーターによって制御されているため、センサーやモーター自体の故障が発生すると、純正部品の入手が困難なため、修理が難しくなります。4WSが故障すると車検に通らない可能性もあるため、購入前にシステムが正常に動作するかチェックが必要です。
3.3 燃費とランニングコスト
2.5L V6エンジンは、FF車としては排気量が大きく、燃費はあまり良くありません。
【年間維持費の目安】
2.5Lクラスの自動車税(13年超で年間45,400円)は覚悟が必要です。故障リスクと整備性の悪さを考慮すると、修理積立金を含め、年間40万円~50万円程度は見ておくべきでしょう。
4. MX-6オーナーの「生の声」:コメント欄の反響
オーナーからの声

「2.5L MTの4WS車に乗っています。低速ではFFですが、高速コーナーの安定感は異常です。何よりもトンネルでのV6サウンドが素晴らしく、これがMX-6最大のロマンです。ただ、先日4WSの警告灯が点灯し、戦々恐々としています。」

「地味な色を選んだので誰も気づきませんが、駐車場で自分の車だけ異様なオーラを放っています。内装も当時のマツダ車にしては高級感があり、長距離移動は快適です。タイミングベルト交換の工賃が驚くほど高かったことだけが悩みです。」

「デザインに惚れて買いました。タマ数が少ないので、部品取り車を探すのが大変です。幸い、エンジンは頑丈ですが、エアコンの修理部品がもうないと言われました。旧車は覚悟が必要だと痛感しています。」
5. まとめ:MX-6は「デザインと技術」への愛を試される車
マツダ MX-6は、流麗なデザイン、官能的なV6エンジン、そして先進的な4WSという、当時のマツダの技術力を結集したFFスペシャリティクーペです。
「ユーノス」の夢と共に散った悲運のモデルですが、その美しいフォルムと独特の走行フィールは、今なお多くのマニアを魅了します。
MX-6を維持することは、「部品のない不安」と「複雑な機構の故障リスク」と戦うことと同義です。しかし、その苦労に見合うだけの「唯一無二の存在感」と「V6サウンド」が、この車にはあります。
「バブル時代のマツダの技術とロマン」を味わいたい、私たち現役世代にとって、MX-6は最高の隠れた名車と言えるでしょう。
【次の記事予告】
SVX、MX-6と、バブル期の個性派クーペが続きました。次回は、同じくマツダのV6エンジンを搭載しながら、さらにコンパクトで美しいセダン、「ユーノス 500」の記事を作成する予定です。MX-6の兄弟車でありながら、その魅力は大きく異なります。ご期待ください!



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